親知らずについて
以前、老人ホームで検診をしていたときに、
90歳になる、あるお婆ちゃんが、
「先生! 私ね、最近歯が生えてきたんですよ!」
と、大変な慶び様で報告してくださったことがありました。
見せていただくと、本来一本も歯がなかった口の中に、
綺麗で立派な親知らずが、右下の一番奥に一本だけ生えているではないですか!
実はこれって、今まで顎の中で眠っていた親知らずが、
生えてきたというより、顎の骨がお年で吸収されて薄くなって・・・
言わば、発掘されたようなもの!
それでもお婆ちゃんのご自慢の歯なんですね!
嬉しそうなお婆ちゃんを見ていたら、
「随分と遅咲きに役に立った親知らずだなぁ」なんて、
ちょっと感慨深げになりました。
ところで、親知らずって何の為にあるのでしょうね?
現代人の顎の骨格は小さくなってきています。
これは、硬いものを食べなくなったからだとか、諸説ありますが、
ネアンデルタール人や、縄文人などに比べても小さいらしい。
そうすると、普通の本数の歯ですら顎に収まらない方が増えてきていて、
まして親知らずなど登場する隙間は全く無い!という方がかなり多い。
そもそも、硬いものを食べ続けて磨り減った歯を補充する役目を持って生まれてくる親知らず、
そんなに磨り減らないのだから必要ない。
だから、邪魔になってしまうのですね!
十分に歯が足りている顎に無理やり親知らずが生えようとするから・・・
歯茎が腫れたり
隣の歯を虫歯にしたり
歯並びを悪くしたり
顎を痛くしたり
なんて事が起こるのです。
あ、前述のお婆ちゃんのような役の立ち方は別としても、
親知らずでちゃんと噛めていたりして、役に立ってる方も沢山います。
親知らず=悪
親知らず=親不孝
なんて、誤解しないでくださいね(笑)
ただ、もし親知らずが生えてくるせいで、
折角の素敵な歯並びが壊れてしまう危険があるなら抜いたほうが良いでしょう。
変な生え方、変な形をしていて虫歯になってしまったり、虫歯菌の基地になってしまうなら、抜いたほうが良いかもしれません。
いつ子供が出来るか分からない女性も、親知らずが悪さをしないように気をつけてください。
出張が多いサラリーマンの方も海外など特に大変な思いをしてしまう危険もあります。
将来、親知らずが役に立つ可能性も考慮して、
今の状況と、自分の気持ち、
メリット、ディメリットを良く考えてあげて下さい。
本当は役に立ちたくて生まれてきた、
結構良い奴なんです!